こんにちは、あしあです。
神戸市立博物館にて開催(北九州市立美術館を巡回)されている「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」(通称グレイツ展)から帰ってきたのでその振り返りをします。
「スコットランド×巨匠」と聞いても、いまいちピンときませんよね。
僕もそうでした。スコットランドって西洋美術の主流というイメージはないですし、2つのワードから漂う厳かな感じが、むしろ美術初心者からすると取っ付きにくい印象を与えます。
でも実はこの展覧会、西洋美術初心者こそ満足できる内容だったのです。
その理由を説明します。
展覧会を振りかえる
推しの巨匠が見つかる
グレイツ展は、西洋美術史の要点を押さえた構成になっています。
つまり、16世紀ルネサンス→17世紀バロック→18世紀ロココ→19世紀ロマン主義、ラファエル前派、印象派、ポスト印象派といった各時代の代表的な流行を一通り見渡せるように、偉大な画家の作品が配置されています。
よって、お気に入りの巨匠が見つかる確率が高いです。
(正直なところ、スコットランド国立美術館がこれほど層の厚いコレクションを保有しているとは思いませんでした。)
絵画鑑賞は、推しの画家を見つけると一気に楽しくなります。
自分の感覚でどれか一つ気になる絵を選んでみましょう。そのままその巨匠を推しにしてもいいですし、それを手がかりに同時代の巨匠やトレンドを調べていくと、より自分好みの画家にたどり着くと思います。
僕の場合、レンブラント《ベッドの中の女》のような細やかな心情表現や、ブーシェ《田園の情景》にも見られるロココの優しい色彩表現が好みだなと感じました。
英国美術の芽吹きを発見できる
西洋美術の中ではマイナー扱いされる英国ですが、ちゃんと(と言ったら失礼ですが)芸術文化が育っています。こういった事実を知っていくことが、初心者から抜け出す一歩になります。
英国では肖像画が盛んに描かれました。
まず押さえておきたいのは、ヴァン・ダイク(第2章《スピノーラ侯爵の肖像》)の存在です。英国人ではありませんが、イングランドに渡り影響を与えた人物です。
この展覧会では、彼の上品な作風から、英国出身レノルズの工夫を凝らした集団肖像《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》や、ゲインズバラの風景とマッチした《シスルスウェイトの肖像》、さらにはスコットグラント人のグラント《マーカム夫人》や、レイバーン《クルーンズ少佐》へと、英国肖像画の発達を見せてくれます。
僕が肖像画で最もゆっくりと時間を過ごしたのが、ミレイの《古来比類なき甘美な瞳》。魅力的な瞳、象徴スミレへの含意、英国文学の香るタイトルと見応えのある作品でした。
英国の好きな巨匠を見つけました。
ヨーロッパへの旅心を満たせる
グレイツ展は風景画も充実しています。
風景画に遭遇したら、難しいことは考えず、その景色に飛び込んでみましょう。
風の音に耳を澄ませ、空気の匂いを嗅いでみるのです。まるでヨーロッパを旅した気分になるでしょう。
どれも良い風景画ばかりですが、特に3つを僕の独断で選ぶとしたら以下の作品です。
- アールベルト・カイプ《ファルクホフ城の見えるネイメーヘンの風景》:17世紀オランダ都市の夕暮れの時間を留めている
- ウィリアム・ダイス《荒野のダビデ》《悲しみの人》:スコットランドの荒涼とした雄大な自然を体感できる
- ウィリアム・ターナー《トンブリッジ、ソマーヒル》:この長閑な水辺にずっと佇んでいたい
僕はコンスタンブルよりもターナーの方がいい。ともに19世紀イギリスを象徴する風景画家として並べられているコンスタンブルの《デダムの谷》も写実的で美しいけれど、情緒が豊かに感じられるターナーの方が好みですね。
英国の好きな巨匠を見つけました(2人目)。
こうやって自分の好みを発見していくのも鑑賞の醍醐味ですよね。
ちなみに、どちらも先述の肖像画と風景画の二刀流・ゲインズバラの影響を受けているようです。
肖像画から風景画へ。
英国美術の系譜という点からも学びの多い展覧会でした。
以上、グレイツ展の振り返りでした。今後の美術鑑賞の一助となりましたら幸いです。
風景画を見つけたら、その土地を旅しよう
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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あしあ
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