【エゴン・シーレ展】ジョジョに近い?若き天才シーレの見どころ「ポーズする絵」を解説【東京都美術館】#26

企画展

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「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」

2023年 1月から東京都美術館(東京・上野公園)にて開催された展覧会です。(巡回の予定はありません)

あちこちで特集が組まれていて、注目度の高さがうかがえます。

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エゴン・シーレはどうして多くの人々に愛されているの?

私も、展覧会に行く前は、なぜ人気があるのかを理解していませんでした。今回は、実際に見に行ってきた体験を基に、私が感じたエゴン・シーレの作品の魅力について書きたいと思います。

この記事を読むことで、絵の特徴が事前に分かるので、「エゴン・シーレ」展でより深く鑑賞しやすくなります。また、シーレと関連がある表現主義の作品に親しむきっかけにもなります。

結論から言うと、エゴン・シーレ作品の魅力の一つは、モチーフの個性的なポーズです。その独特さは、『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦にも影響を与えている可能性が高いです。今回は具体的に以下の作品を紹介します。

エゴン・シーレの「ポーズする絵」を解説

エゴン・シーレ《吹き荒れる風の中の秋の木(冬の木)》

《叙情詩人(自画像)》1911年(レオポルド美術館蔵)

エゴン・シーレは、自画像の作品が多いことで知られています。代表作に最も挙がるのは、《ほおずきの実のある自画像》(1912年. レオポルド美術館蔵)ですが、強烈な表現力という点では、《叙情詩人(自画像)》も印象に残る作品です。画家の内面世界を反映した表現主義的な傾向が認められます。

首が、無理やり画面に押し込まれるようにねじ曲がっていて、窮屈そうです。うつろな目からは、内政的な気質で、画家の不安や苦悩が伝わります。顔や肉体の表現がグロテスクで、病的な印象を与えます。そして意味不明な手のポーズが、シーレの不安定で奇妙な世界を演出しています。

《闘士》1913年(個人蔵)

戦闘のポーズをとる裸体像。シーレ的ポーズの特徴が詰まっています。

  • 目力のある、挑発的な眼差しのキメ顔
  • 痩せ細った体つき
  • 奇妙な手指の構え
  • 正面ではなく、半身に構えた姿勢。あるいは、不自然な体勢
  • 肌の中に鮮やかな青、赤、緑色が混じった個性的な肉体表現

シーレの人物像は、子どもでも挑発します。《プット(アントン・ペシュカ・ジュニア)》(1915年. レオポルド美術館蔵)では、背を向けて立つ子どもが、こちらを振り向いて両手でポーズをとっています。一丁前にキメ顔をしているようですが、眼差しはまだまだ幼くて可愛さがあります。

このようにシーレポーズは、思わずまねをしたくなるほど、魅惑的です。「ジョジョ立ち」に近いものを感じます。

《しゃがむ裸の少女》1914年(レオポルド美術館蔵)

女性像(裸婦像)。特徴のあるポーズで、女性の身体と性を表現しています。

裸で床に座り込み、脚を広げてうずくまっていて、裸婦像として風変わりな姿勢です。強い眼差しでこちらを睨み、空気が張り詰めています。頭や足先から緑色のオーラが出ていて、毒や死のようなネガティブなイメージを連想させます。

単なるエロティシズムにとどまらず、近寄りがたい気配が漂うのがシーレの裸婦像なのです。

《菊》1910年(レオポルド美術館蔵)

静物画。シーレは、花のモチーフも身体的です。

明るいピンク、黄、緑色の花の集まりが、暗い背景に映えて綺麗です。しかし、一片一片の花びらがゆらゆらとしていて、おどろおどろしさがあります。何よりも全体の形状が奇妙で、どうしてこのような構図にしたのか違和感を覚えます。

私にはこれが、横を向いた人物像に見えました。赤紫色の大輪が左肩部分で、その上のピンク色の集合が顔です。視線が左下を向き、顔の表情は分かりませんが、うつむいて、どことなく憂いを帯びた情感が漂っています。

あくまで主観ですが、花の集合体が人間に似たポーズに見えて引き込まれる不思議な絵です。植物にも、人間と同じように感情があるのかもしれません。

《吹き荒れる風の中の秋の木(冬の木)》1912年(レオポルド美術館蔵)

風景画。シーレ的なポーズは風景の中にも存在します。

たった一本の枯れ木が、根元から灰白色の荒涼とした空気の色に溶け込み、途中から本来の姿を現しています。その細長い幹は大きくしなっていて、かなりの強風が吹いています。細い枝が画面いっぱいに伸びて、生のエネルギーを象徴しているようです。

この木はまるで、厳しい現実に翻弄されながらも、しなやかに生きる人間の姿勢のようで、見応えがあります。

目に見えない価値を独自のポーズで表現しているからこそ、心を打たれるのです。

いかがでしたか。シーレの作品を見る際は、「ポーズ」にもぜひ注目してみてください。さらにシーレの世界の深淵をのぞきたい方は、こちらの本と映画がおすすめです。

今回の紹介は以上です。

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