【大阪の日本画】史上初の日本画展の見どころを紹介します【中之島美術館】#22

企画展

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「開館1周年記念特別展 大阪の日本画」

2023年1月から大阪中之島美術館にて開催された展覧会です。(東京ステーションギャラリーへ巡回予定)

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大阪の日本画ってどんなものかイメージが湧かない…。大阪で活躍した画家も知らないし…

たしかに、日本画といえば、京都か東京の印象がありますよね。私も大阪画壇の存在を知りませんでした。

そこで今回は、実際に「大阪の日本画」展を見た私の体験を基に、近代大阪の日本画の特徴を解説します。

この記事を読めば、

  • 大阪の街が生む美術の、独自の魅力をより深く知ることができます。
  • 「大阪の日本画」展をこれから見に行く方、チケットを買おうかまだ迷っている方は、本展の魅力が分かります。

結論から言うと、大阪の日本画には以下の特徴があると思います。

  • 色彩が明るい
  • 表情や仕草に人情味がある
  • 商家や財界人らの要望を反映した粋な作り
  • 優れた女性画家を輩出する土地柄

私が特に印象に残った作品5点を取り上げながら紹介します。

大阪の日本画の魅力が分かる作品を紹介

島成園《祭りのよそおい》会場撮影許可エリアより

中村貞以《失題》1921年(大阪中之島美術館蔵)

肘掛けにもたれている婦人。画面いっぱいに描かれていることから、実際に会ったら存在感がある人物なのでしょう。こちらに耳を傾けて、今にも語り始めそうです。会話好きで親しみやすい感じを与えます。

綺麗に描くことよりも、人情を重視して人間らしく描く。作者のそのような信条が見事に成功していると感じました。

中村貞以(なかむらていい)は、大阪画壇の先駆者ともいえる北野常富(きたのつねとみ)の門下生。その画風は大胆かと思いきや、《朝》(1932年. 京都国立近代美術館蔵)の構図には緻密さがあります。驚くべき実力者です。

ところで、《朝》に特徴的な「赤と青の対比」は、本作の女性のアイラインにも見られます。このように画家の細かな傾向を見つけていくことも展覧会の楽しみ方です。

生田花朝《だいがく》昭和時代(大阪府立中之島図書館蔵)

夏の夜空に、紅白の提灯が何段も並んだ高い櫓が立ち上がっています。鮮やかな櫓を担ぐ男の大群から、祭りの熱気がひしひしと伝わってきます。それぞれの表情を見ていくと、何となくひょうきんで面白い

同様の色彩と情味の集い《天神祭》(1935年. 大阪府立中之島美術館蔵)においても見られます。大阪らしさを感じる風俗画に、思わずほっこり。

生田花朝(いくたかちょう)は、古き良き大阪を伝える「浪速風俗画」を確立した菅楯彦の弟子にあたる女性画家です。

西山完瑛《涼船図》1861年(個人蔵)

街近くを流れる川を進む屋形船。これもまた大阪の情景でしょう。船の乗客は芸妓さんと雅な舟遊びをしています。右上には「涼しさや…」と始まる俳句が書かれ、その字体は麗しい。画面全体から漂う風情が垢抜けていて、粋な作品です。

西山完瑛(にしやまかんえい)は、父の芳園とともに、京都の四条派の流れを汲む船場派(大阪四条派)の系譜です。船場の商家や大阪の財界人に、邸宅の床の間を飾る絵としての需要があったようです。

本作は夏の絵ですから、おそらく四季の移ろいに応じて模様替えをしていたと想像します。生活と日本画がまだ近かった時代、大阪の町人文化が浮かび上がる作品です。現代においても、その丁寧な暮らしに共感する人はいるのではないでしょうか。

島成園《祭りのよそおい》1913年(大阪中之島美術館蔵)

夏祭りの日、商家の軒先に、華やかに着飾った女の子たち。縁台に腰掛けて、足をぶらぶらさせる姿がなんとも愛らしい。

一方、離れてじっと見つめる、一人の質素な身なりの少女。着物から髪飾り、扇、履き物に至るまで対照的です。ハレの日に浮き彫りになる貧富の差の現実が切ない。

島成園(しませいえん)は、京都の上村松園、東京の池田蕉園と並び、「三都三園」と称された女性画家です。

吉岡美枝《店頭の初夏》1939年(大阪中之島美術館蔵)

長袖の白いセットアップに、赤い書類バッグを持った若い女性。髪型もパーマをかけた当世風の装いです。夏に向けて、ショーウインドウに飾られた緑のワンピースを見ています。整然とした服装と冷静な表情から、仕事帰りの婦人でしょうか。

洋服ファッションや職業婦人は、商工業都市、大阪ならではの近代的な題材です。また、ショーウインドウの内側からガラス越しの視点も斬新です。それでいて、構成は平面的で、日本画らしさを残しています。新しい時代の日本画を体現した作品だと思いました。

吉岡美枝(よしおかみえ)もまた大阪を中心に活躍した女性画家です。どうやら大阪には優れた女性画家を輩出する土壌があるようです。

ところで、大阪の日本画は、全体的に色の明度が高い印象を受けました。それは本作もそうですが、日本画定番の画題である孔雀図においてより鮮明です。本展の平井直水《梅花孔雀図》(大阪中之島美術館蔵)と、円山応挙の代表作である《牡丹孔雀図》「日本美術をひも解く」展にて鑑賞)とを比較すると面白い。色彩の明るさもまた大阪らしさなのかもしれません。

今回の紹介は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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