今日も「かえる観覧帳」を読みに来てくださり有難うございます。
今回ご紹介する美術館はこちら!
国立西洋美術館「常設展」(東京・上野)

美術館の常設展の楽しみ方を知りたい

企画展を見るために訪れることはあるけど、常設展はいつも素通りしてしまう
こんな人のための記事です。
結論から言うと、国立西洋美術館の常設展では、現代以前の西洋絵画を存分に楽しめます。西洋美術館といえば、クロード・モネの《睡蓮》(1916年)を思い浮かべる方が多いと思います。もちろん、モネの《睡蓮》も大変に素晴らしく、一度は見るべき作品です。
しかし、国立西洋美術館の見どころはそれだけではありません。それより前の時代に制作された作品も数多く展示しています。オールド・マスターと呼ばれるヨーロッパの傑出した古典を国内で楽しめる場所は他になかなか無いので、是非とも訪れてもらいたいです。
具体的に何を見たらいいの?そんな方のために、実際に行ってみて私が魅力を感じた国立西洋美術館コレクションの作品を5つ取り上げながらご紹介します。
あくまで私が個人的に気になった作品なので、感想が違うところもあると思いますが、楽しんで読んでもらえたらと思います。
この記事を読むことで、国立西洋美術館の常設展の楽しみ方を知り、皆さまの日常と美術館の距離を近づける一助となれば嬉しいです。
早速ですが、今回私が選んだ作品はこちらです。
順番に紹介していきます。
国立西洋美術館「常設展」の見どころ

ルネサンス美術を楽しむ
①パオロ・ヴェロネーゼ《聖カタリナの神秘の結婚》1547年頃
母に抱かれた幼い子と若い女性が見つめ合っている絵。
タイトルにある「結婚」というにはあまりに現実的ではないペアなので。つまりこれは宗教上の伝説を描いた絵画でしょう。母と子はやはり聖母マリアとキリストになります。
ところが、その描かれたキリストは陰になっていて、画家が大事に扱っているようにはあまり感じられません。むしろ衣装の方に光が当たっていて、赤とグリーンの色が印象的に映えています。画面左上には立派な紋章があり、この画家には有力なパトロンがいたようです。画家の関心事に興味が湧く作品です。
②ティツィアーノ・ヴェツェッリオと工房《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》
若い女性が男の首を載せた盆を持っています。
女性は高価な装飾品を身につけていて、身分が高そうです。女性の肌に血色があり、生命感があります。それは手元の男の顔色とは対照的で、さらに際立っています。
衣装や装飾品も色彩豊かで、思わず惹きつけられます。
とりわけ、衣装の筆遣いが自由で面白く、当時としては新しかったと思います。
色の塗り方にも注目してほしい作品です。
③ルカス・クラーナハ(父)《ホロフェルネスの首を持つユディト》1530年頃
無機質な厚い壁の建物の中で、騎士のような装いの女がこちらに目を向けています。
生々しい男の首と真っ直ぐな剣を手に持ち、その姿に凛とした勇ましさが感じられます。
女の目は冷ややかでありながら、どこか神秘的で、とても惹きつける力がありました。
クラーナハは、ルネサンス期の15〜16世紀にドイツで活躍した画家です。同じルネサンス期でも、アルプス山脈を隔てて南(イタリア)と北(ネーデルラント・ドイツ・ベルギー)とでは様式が随分と異なっています。そのことがよく分かる点でも興味深い作品です。
バロック美術を楽しむ
④ペーテル・パウル・ルーベンス《眠る二人の子供》1612-13年頃
二人の幼い子どもが、一枚の毛布に入って隣同士で眠っています。
寝相がばらばらで、ただ眠っていても子どもの活発さが伝わってきます。一目で愛らしさが感じられる作品です。
特に見てほしいのは、子どものほっぺたの表現です。赤さが目立ち、色彩が輝いています。形はふくよかで、柔らかみがあります。子どもの顔とそれ以外(床や毛布)の明暗の使い分けも上手いなと思いました。
写実主義を楽しむ
⑤ギュスターヴ・クールベ《罠にかかった狐》1860年
雪が積もった森で、1匹の狐がトラバサミにかかっています。
軸足で踏ん張って引き抜こうにもびくともしないほど右前足を堅く挟まれ、身体を激しく後ろへ反らせていて、感じている痛みの大きさが伝わります。
テーマは狩猟。先史より行われてきた人間の営みを具に観察する画家の視点が、歴史画を中心とする絵画伝統の枠組みをあっさりと飛び越えていて、クリティカルで面白いと思いました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回紹介したのは、国立西洋美術館のコレクションのほんのごく一部です。本当にたくさんの傑作がまだまだ展示されています。
常設展には、いつ行っても、あの部屋のあの壁にあの作品があるという良さがあります。みなさまもぜひ国立西洋美術館の常設展で自分のお気に入りの絵画を見つけてください。
どの絵に惹かれるかは、もちろん人によって異なります。自分が何に心を動かされたか、何に共感したかを知ることは、自分自身の状態や価値観を知ることにもつながります。絵の中に好きなもの、嫌いなものを見つけることで、あなたの日常をより豊かにしてもらえたらと思います。
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あなたの目に映る日常に、「美」が届きますように!
ではまた!
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