【アーティゾン美術館】行ったときに見ておきたい作品をご紹介【常設展】#23

常設展

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アーティゾン美術館 常設展「石橋財団コレクション選」(東京・京橋)

ブリヂストン美術館を前身とする新しい建物の展示空間で、石橋財団の所蔵作品の中から選りすぐり作品を年間を通じて紹介している展覧会です。

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企画展のために行くけど、常設展の方は見どころが分からない……。

アーティゾン美術館では、同時開催の展覧会のチケットで常設展も観覧できます。しかもそのコレクションは質が高いと評判です。しかし、企画展で満足したり、時間が無かったりで、せっかくのチャンスを充分に楽しめるか不安な方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、私の体験をベースに、「アーティゾン美術館へ行ったら見ておきたい作品」をご紹介します。(ただし展示替えの関係で見られない場合があるので注意してください)

この記事を読むことで、常設展の見どころやコレクションの特徴がわかるので、美術館の性格に合わせて鑑賞を充実させることができます。

結論から言うと、アーティゾン美術館のコレクションの特徴は以下になります。

  • 西洋の印象派と20世紀美術
  • 日本の近代洋画

具体的なラインアップはこちら!順番に解説します。

アーティゾン美術館の常設展で見どころの作品を解説

パウル・クレー《島》会場撮影許可エリアより

藤島武二《黒扇》1908-09年頃(アーティゾン美術館蔵)

青い瞳に高い鼻の西洋人女性。白いベールと黒い扇という色の対比が印象的です。随所に赤と青の対比も見られて、色使いが巧みです。

顔の表情が細密に描かれている一方で、そのまわりのベールや扇などはささっと描かれています。画家の、女性の顔の表現に対する強い関心がうかがえます。それでも作品全体の気品を保っているところが素晴らしく、むしろこなれた感じさえ与えます。

光は画面右から当たっていて、明るい色と影の暗い色が、顔の立体感を際立たせています(キアロスクーロ技法)。光によるグラデーションは扇にも用いられています。

藤島武二は、黒田清輝と同時代の洋画家です。明治期の日本人の油絵で、これほど達者で滑らかに描かれたものは他に無いでしょう。

パウル・クレー《島》1932年(同)

赤、青、黄褐色の色相が滲む画面。そしてその上を自由に走る一筆書きの線。

点々(ドット)が均一に、しかし近づいて見ると面ごとに色がついている不揃いの点が、画面を満たしています。色、点、線、そして面が響き合い、総合的に一つの絵画を形成しています。

絵の下地は、土のようなざらつきのある質感です。線の軌跡をのんびりと辿ってみてください。旅の記憶を振り返っているような感覚になり、心が安らぎませんか。

パウル・クレーはスイス出身の画家で、20世紀にパリ一辺倒ではない独自の動向を生み出しました。

アンリ・マティス《画室の裸婦》1899年(同)

室内でポーズをとって台の上に立つ裸婦。その奥には画家らしき姿があります。

裸婦は伝統のテーマですが、肌の赤色が鮮烈です。そして背景の緑色が激しい対比になっています。首から胸元にも緑が用いられていて、色使いが大胆です。

アンリ・マティスは、フォーヴィスム(野獣派)の中心人物で、のちにピカソと並ぶ20世紀を代表する画家へと評価を高めていきます。この作品は、1905年秋のサロンでフォーヴ(野獣)と評される前のものです。

左側の窓などは、シニャックら新印象主義の点描を引き継いでいますが、その色彩とタッチはやはり力があります。今となっては巨匠が現れる兆候が確認できる作品です。

ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年頃(同)

木々の隙間にすっぽりと描かれた山が雄大です。

その手前の建物は、左側だけ視点が異なるように見えますが、木々の輪郭とは馴染んでいます。空と山肌の色が同じような青緑色で不思議ですが、建物のオレンジ色とは調和がとれています。色のかたまりで表された緑の木々はボリュームがあります。

ポール・セザンヌは、現実世界に匹敵する絵画空間の構築を目指しました。のちの巨匠たちに影響を与えた、20世紀美術の先駆者です。

ベルト・モリゾ《バルコニーの女と子ども》1872年(同)

室外に出て景色を眺める女の子と母らしき婦人。目の前には、ヨーロッパの街並みが広がっています。

少女は、遠くを真っ直ぐに見つめて、外の世界に興味津々です。それでも、手で柵をしっかり掴んで、高い所が少し怖そうです。

婦人は真面目な顔つきで、視線は手前の下の方に向けられています。あるいは、子どもに注意して見守っているようにも見えます。どちらでしょうか。

少女の衣服と対照的に、婦人が着る黒いドレスには気高さが感じられます。純真と品格。人間の成長というテーマも読み取れる作品です。

ベルト・モリゾは、エドゥアール・マネのモデルとしても知られる女性画家です。のちに印象派展を舞台に活躍しました。本作では、同時代の都会人の生活をモチーフにしているところに、近代絵画の父・マネの影響が感じられます。

この作品以外にも、アーティゾン美術館の常設展には印象派の名品がたくさん展示されています。印象派については、また別の記事で取り上げようと思います。そちらも是非お読みいただければ幸いです。

今回の紹介は以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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[参考文献]

辻惟雄(2021).『日本美術の歴史 補訂版』.東京大学出版会

早坂優子(2006).『鑑賞のための西洋美術史入門 (リトルキュレーターシリーズ) 』.視覚デザイン研究所

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