こんにちは、あしあです。
東京藝術大学大学美術館にて開催されている展覧会「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」にギリギリ滑り込みで行ってきました。(所要時間約110分)
日本美術ってなんだか敷居が高そうですよね。
私もそんなイメージから無意識に日本美術から遠ざかっていました。
でもこの展覧会、最高水準の作品を例に、知識ゼロの人でも日本美術の楽しみ方を体系的に会得できる絶好の機会だったのです。
残念ながらまもなく閉幕してしまいますが、今後どこかで日本美術を鑑賞する際に役立つように、今回学んだことを共有しておきたいと思います。
ふりかえる
書跡の場合
文字が記された「書跡」の作品の場合、その文字の美しさはもちろんのこと、実は用いられている紙に注目してみるのも楽しむポイントのようです。(料紙と呼びます。)
料紙には装飾など様々な趣向が凝らされており、日本の紙文化が発達していたことが窺えます。
例えば、《紫紙金字法華経》では、高貴な色とされた紫色の料紙に、金字で書かれた書跡が鮮烈でした。
また、藤原行成によるものと伝えられる《粘葉本和漢朗詠集》では、雲母(きら)で草花の文様が施された料紙が使用されています。
くすみ銀をしたこの雲母は、ケイ酸塩鉱物に分類される鉱物の一種で、先日行った大阪市立自然史博物館の鉱物エリアでも展示されていました。
このように古代から利用されていたのですね。仮名と漢字と文様の調和が美しい名品です。
ちなみに、小野道風、藤原佐理、藤原行成は、三跡と呼ばれる書家の大スターなので、覚えておくとよいかもしれません。
物語の場合
巻物や屏風などに物語が描かれた作品は、あらすじを理解した上で、人物や装束、調度など描かれたものの細やかさや色使いをじっと見てみましょう。
例えば、俵屋宗達の《扇面散屏風》。屏風に貼り付けられた何枚もの扇の小さな面に、平治物語や保元物語、伊勢物語の場面がそれぞれ細かく描き込まれています。殊に光彩を放っていました。
尾形光琳《西行物語絵巻》では、自然の優しい色使いが目を喜ばせてくれました。
実はこれは、俵屋宗達の作品を模写したものらしいです。
先人に学び、自らの画風を確立し、これが後に琳派を形成していく流れとなります。
ここにも継承の”物語”がありますね。
他には、紫式部が源氏物語を起筆する場面をモチーフにした《石山寺蒔絵文台・硯箱》も印象に残っています。
この作品はパリ万博に向けて制作され、なんと大賞を受賞したそうです。
世界に高く評価された、蒔絵という技法の魅力を体験しました。
生き物の場合
ありのままに愛でて楽しめるのが、生き物を描いた作品。
わーかわいい!かっこいい!素直に心を躍らせて楽しんでいいのだと体得しました。
大人気で本展の目玉でもある伊藤若冲の《動植綵絵》では、動物と植物の構図に独創性があり、生き物が生き生きと躍動していました。
日本美術も鑑賞を重ねると、よく描かれる画題があることになんとなく気付きます。
『花に鳥の図』という組み合わせが代表的で、鳥の中では孔雀がその一つ。
なぜ孔雀が描かれるかというと、邪気を払う縁起物とされてきたからだそうです。
本展にも孔雀図が展示されていました。
それも”孔雀図の完成形”との呼び声高いのものが。
百花の王・牡丹と描かれた、円山応挙の《牡丹孔雀図》。
羽根の精緻な描写と生彩な青色や緑色、そして凛とした表情。
この孔雀の格好良さに陶酔しました。いちばん感動した作品です。
さらに、洋画を追っていて以前から気になっていた、東京藝大の宝物である高橋由一《鮭》も見ることができました。
この絵が重要な理由は、日本で初めて描かれた油絵だからです。
一歩離れてみると本物の鮭と見間違うほどのリアルさ。
油絵の可能性に当時の人は驚いたでしょうね。
当時はまだカンバスが無く、紙に工夫をして描いているのも見逃せない点です。紙と生きる国、日本。
風景の場合
風景を描いた作品を楽しむコツは、この章題にもあった通り、そっと風景に心を寄せること。
このジャンルにも、日本美術の巨匠の作品がありました。
横山大観の《飛泉》。対面すると、水の真っ直ぐな勢いが感じられます。
西洋画の印象派の作品を見た際に感じるような、空気感のある作品でした。
七宝の魅力を知れたのも今回の収穫の一つ。
無線七宝という技法を用いて作られた濤川惣助(なみかわそうすけ)《七宝寰宇無双図額》の、淡い色の富士山の美しさが忘れられません。
また、有線七宝を用いた並河靖之(なみかわやすゆき)《七宝四季花鳥図花瓶》。
日本の四季の美しさが、1つの花瓶に繊細かつ優美に表現されています。
ぐるりと回りながら、その描かれた世界に引き込まれました。
今回出会った七宝の二人のナミカワ。是非心に留めてほしい存在です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
これから日本美術の楽しんでみたい人にとって、何か少しでも参考になることがありましたら幸いです。
日本美術は、継承された画題と技法に馴染もう
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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